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小説『ひまわりのマーシャ』

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目次

小説『ひまわりのマーシャ』

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小説『ひまわりのマーシャ』

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ばさばさ――、ばさばさ――

ヒマワリのカーシャが
体をしならせました。

カーシャは、
ひまわり公園に咲いている
お母さんヒマワリです。

ばさばさ――、ばさばさ―― 

お母さんヒマワリの
カーシャは、
まだお腹にくっついている
甘えん坊の子供達に声をかけます。

「さぁさぁ、みんな。元気で行ってらっしゃい」

「は~い」

お母さんヒマワリの
カーシャのお腹から
子供達は元気な声で
返事をしました。

「この甘えん坊さん達とも、今日でお別れなのね・・・・・・」

お母さんヒマワリの
カーシャは自分のお腹にいる
子供達を感慨深げに見つめています。

そうです。

今日はお母さんヒマワリの
カーシャの子供達である
ヒマワリの種達の旅立ちの日です。

もうすぐ、ひまわり公園の
夏も終わります。

まだ小さい子供達には、
寒い冬は耐えられません。

だから、子供達は
お母さんヒマワリの
カーシャと離れて、

ひまわり公園の
事務所で冬を越すのです。

お母さんヒマワリの
カーシャのお腹から子供達が、
名残惜しそうに飛び出して行きます。

ばさばさ――、ばさばさ――

「よいしょおっ!」

「それぇ!」

子供達は次々に
地面に着地していきます。

あれれ? 
まだ、お母さんヒマワリのカーシャの
お腹にしがみついている子がいますよ。

あれは、誰でしょう?

ほら、耳をすませてくださいな。

あのヒマワリの子供は泣きながら
こんな事を言っていますよ。

「行きたくないよぉ。私・・・・・・
まだまだ、お母さんのお腹の中にいたいよぉ」

おやおや。あれは、マーシャですね。

マーシャは
ヒマワリの子供達の中で
一番年上のお姉ちゃんなのに・・・・・・。

マーシャは一番の泣き虫で、
一番の甘えん坊さんの
女の子なのです。

ほら、そんなマーシャに向かって、
しっかり者のヒーマが
何か言おうとしていますよ。

「ちょっと! マーシャ! いい加減になさい!」

ヒーマはマーシャを見上げて
口を尖らせます。

「いつまでお母さんに甘えているの! 
今日でお母さんとはお別れなのよ!」

「び、びぇぇ・・・・・・お母さーん!! 
ヒーマがまたいじめて来るよー!!」

マーシャは、
お母さんヒマワリのカーシャの
お腹に縋り付くように泣き出しました。

「この子もこんなに大きくなって――」

、お母さんヒマワリの
カーシャは昔を懐かしむように
目を細めました。
 
マーシャ達が産まれたのは、
とてもとても暑い夏の日でした。

ほら、よくごらんくださいな。

お母さんヒマワリの
カーシャのお腹の中で、
たくさんのヒマワリの種の赤ちゃん達が
産声をあげていますよ。

「おぎゃー! おぎゃー!!」

「カーシャ。よく頑張ったね」

桜の木のサクラおじさんが
笑顔でカーシャに声をかけました。

このサクラおじさんは
何百年も生きている
ひまわり公園一の長老です。

ぱしゃ――。

あ、ヒマワリ公園のひまわり池から
フナが顔を出しました。

あれは、フナおばさんです。

フナおばさんはおひさま池の主です。

いつもは口うるさいフナおばさんも、
この時ばかりは頬をゆるめます。

「カーシャ。おめでとう。
 これで、公園がまた賑やかになるねえ」

マーシャもヒーマも、
ひまわり公園のたくさんの住人達に
祝福されて
この世に産まれて来たのです。

「あんなに小さかった子供達が――」

お母さんヒマワリの
カーシャは空っぽになった
自分のお腹を寂しそうに見つめます。

そして、マーシャも
お母さんヒマワリの
カーシャのお腹を
見上げながら声を漏らします。

「私、また――。お母さんのお腹に戻りたいなあ・・・・・・」

「マーシャ――」

お母さんヒマワリのカーシャが
マーシャに向かって手を差し伸べます。

しかし、サクラおじさんは
カーシャの手を遮るように、
マーシャに向かって声をかけます。

「マーシャ。マーシャは立派なヒマワリになるんだろう? 
 お母さんのお腹の中にいたんじゃあ、
いつまで経っても種のままだよ」

「サクラおじさん・・・・・・」

ぱしゃ――。

フナおばさんも、ヒマワリ池から顔を出して、
マーシャを勇気づけます。

「マーシャ。お母さんよりも
大きいヒマワリになる為に行っておいで。
そして、今度はマーシャが自分の胸の中で
お母さんを抱きしめておあげ」

「うん・・・・・・」

マーシャは、ぐっと涙を堪えます。

「カーシャ! 久しぶりだな! 元気にしてたかい」

こんな大きな声をあげて
近づいて来たのは
ひまわり公園の管理人の
ビリーさんです。

このビリーさんは春になると、
ヒマワリの種を蒔きます。

ビリーさんが蒔いた
ヒマワリの種は夏になると、
ヒマワリになって大きな花を咲かせて、
お腹に子供を宿します。

そして、ビリーさんは、秋になると、
お母さんヒマワリのお腹から旅立っていく
ヒマワリの種を集めに
ひまわり公園にやって来るのです。

ビリーさんは
大きな麦わら帽子を頭から取って、
マーシャ達をまじまじと見つめます。

「うん、うん。みんな可愛くて元気な子供達だ。
 さぁさぁ。恥ずかしがらずに、こっちにおいで――」

ビリーさんがマーシャ達に向かって
手を伸ばします。

マーシャ達は恥ずかしそうに
ビリーさんを見上げながら、
ビリーさんの手に飛び乗って行きます。

「よいしょっ」

「ほらせ!」

ヒーマは、ビリーさんの掌から、
マーシャに向かって呼びかけます。

「マーシャ! 何をしてるの? 
 もう、あなたしか残ってないわよ。早くこっちに来なさい!」

「お母さん・・・・・・」

マーシャは
お母さんヒマワリの
カーシャに向かって
何か言いかけました。

でも、お母さんヒマワリの
カーシャはマーシャの言葉を
遮るように言います。

「マーシャ。安心していってらっしゃい。
 お母さん、ここであなたの帰りをずっと待ってるから」

「お母さん――」

「マーシャ。お母さん何処へも行かないから。
 ここで、いつまでも
 あなた達の帰りを待っているから――」

「うん!」

マーシャは、
お母さんヒマワリの
カーシャに背中を向けて、
ビリーさんの手に飛び乗りました。

「よし! じゃあ出発だ」

ビリーさんは、マーシャ達を
ガラスの瓶に入れて歩き出します。

そして、お母さんヒマワリの
カーシャは、ビリーさんの
背中を見つめながら、
涙をぽたぽた落としました。

「さよなら・・・・・・。私の大好きな子供達――」

これがマーシャ達が見た
お母さんヒマワリの
カーシャの最後の姿でした。
 
「さあ、着いたよ。
 みんなは今日からここで春が来るのを待つんだよ」

ひまわり公園の管理人である
ビリーさんは、
ひまわり公園の事務所に入りました。

そして、マーシャ達が入った
ガラスの瓶を
ひまわり公園の事務所の
机の上にポンと置きました。

この机の側にある大きな窓からは、
マーシャ達がいた
ヒマワリ畑が見えます。

この大きな窓を
マーシャはガラス瓶の中から
じっと見つめます。

「今日から、ここで暮らすんだなあ・・・・・・。
 お母さん。私、立派になってお母さんの所に帰るからね。
 それまで待っていてね。お母さん――」
 
マーシャ達は、
冷たいガラス瓶の中で、
春がやってくるのを
じっと待ちました。

お母さんヒマワリの
カーシャがいない夜は
とてもとても寂しいものでした。

窓についた木の葉が
粉雪に代わる頃、
ヒーマから
咳が出るようになりました。

「こほっ、こほっ――」

ヒーマの咳は日増しに激しくなっていきます。

「ヒーマ、大丈夫かい?」

ひまわり公園の管理人の
ビリーおじさんが
ガラスの瓶からヒーマを連れ出します。

「こほっ、こほっ、こほっ――」

「風邪かな? みんなに
 風邪がうつるといけないから・・・・・・」

ビリーさんはヒーマを連れて
ひまわり公園の管理事務所から
出て行ってしまいました。

それ以来、ヒーマは
マーシャ達の前に
姿を現す事はありませんでした。

窓を覆っていた雪が、
暖かな陽気に誘われて、
ふわり春風になりました。

そうです。

あれだけ寒かった
このひまわり公園にも
春がやって来たのです。

マーシャ達は、ようやく、
お母さんヒマワリの
カーシャが待つ
ヒマワリ畑に帰れるのです。

ビリーさんは、
マーシャ達を入れた
ガラスの瓶を持って、
ヒマワリ畑へとやって来ました。

「ほれ! 大きな花を咲かせるんだよ」

ビリーさんは、マーシャ達をヒマワリ畑にまいていきます。

ばさばさ――、ばさばさ――。

マーシャ達は、地面の上に転がります。

ばさばさ――、ばさばさ――。

「あれ? お母さん? お母さんは? 何処――」

マーシャは必死になって、
お母さんヒマワリの
カーシャを探します。

でも、マーシャ達が
いくら探しても、
お母さんヒマワリの
カーシャの姿は
何処にも見当たりません。

「サクラおじさん、お母さんは? 
 お母さん、何処に・・・・・・いるの?」

マーシャは、何度も何度も
桜の木のサクラおじさんに
お母さんの居場所を聞きました。

でも、サクラおじさんは、
何も答えてはくれませんでした。

「フナおばさん!」

マーシャは、フナおばさんに声をかけました。

でも、フナおばさんは、
ひまわり池に入ったきり
池から出てこようとはしませんでした。
「マーシャ。お母さんよりも、
 大きくてキレイなヒマワリになるんだよ」

サクラおじさんは呟くように言うと、
眠ったように
黙り込んでしまいました。

ミーン、ミンミンミン・・・・・・。

セミの声が
夏の日差しに染み入るように
消えていきます。

マーシャは、
立派なヒマワリになりました。

「マーシャは、ヒマワリ公園一のヒマワリだ」

ひまわり公園の管理人の
ビリーさんは、満足そうに
マーシャを見つめます。

マーシャのお腹の中では、
たくさんの子供達が
賑やかに騒いでいます。

「私、絶対にお母さんより
 大きなヒマワリになるんだー」

「私はお母さんよりキレイな
 ヒマワリになりたいなー」

ひまわりの子供達が
お母さんヒマワリになった
マーシャに甘えるように言いました。

桜の木のサクラおじさんは、
子供達を見守りながら
微笑みます。

「マーシャ。マーシャはお母さんよりも
 キレイで大きなヒマワリになったねぇ」

マーシャは胸を張って答えます。

「当然よ。だって・・・・・・この土の下には、
 大好きなお母さんと
 妹のヒーマが眠っているだもの」

マーシャは自分の足元を
懐かしそうに見つめました。

子供達はそんなマーシャを
不思議そうに見上げます。

「お母さん、ヒーマ。私、ヒマワリになったよ。
 お母さんみたいに大きなヒマワリになったんだよ」

マーシャの落とした涙は、
ぽたりぽたりと土の下に
吸い込まれていきました。

ばさばさ――、ばさばさ――。

マーシャのお腹から、
たくさんの子供達が飛び出していきます。

ばさばさ――、ばさばさ――。

お母さんヒマワリのになった
マーシャの子供達が次々に
マーシャに別れを告げていきます。

「お母さん、春になったら戻って来るからねー」

「お母さん、私が戻るまでちゃんと待っていてね」

「お母さん何処へも行かないから。
 ここで、いつまでもあなたの帰りを待っているから――」

マーシャは昔ヒマワリ畑を旅立つ時に、
お母さんヒマワリのカーシャーから
言われた言葉を子供達に言いました。

「よし! じゃあ出発だ!」

ひまわい公園の管理人の
ビリーさんは、
マーシャの子供達を次々に
ガラスの瓶に入れて歩き出します。

「これがお母さんの気持ちなんだね。
 お母さんはこんな気持ちで
 私達を送り出したんだね・・・・・・」

マーシャは声を震わせながら、
ビリーさんの遠ざかっていく背中と
ガラスの瓶に入った子供達を見つめます。

「よく頑張ったね。マーシャ」

サクラおじさんが
マーシャを労(ねぎら)います。

ぽしゃ――

フナおばさんも、
ひまわり池から顔を出し
て声をかけます。

「マーシャ。何も考えずに、ゆっくりおやすみ」

「さよなら・・・・・・。サクラおじさん、フナおばさん。
 私が生きたひまわり公園のみんな。
 そして、私の大好きな子供達――」

マーシャがゆっくりと、
地面に向かって倒れていきます。

「やっと、会える。お母さん、ヒーマ。
私もお母さん達のいる場所に行けるよ。
これで二度と離れずにすむよ。
これで、ずっとずっと、一緒だよ。お母さん――」

ひまわりのマーシャは、
お母さんヒマワリカーシャーや
ヒーマいるヒマワリ畑の土を
抱きしめるように倒れこみました。

そうです。

マーシャも子供達と同じように、
ヒマワリ畑から旅立って行ったのです。

ヒマワリは、ヒマワリの種を
地面に蒔いた後、土に帰ります。

ヒマワリのお母さんは、
子供達がヒマワリになった姿を
見る事はできません。

でも――
だからこそ・・・・・・。

ヒマワリは、
お母さんよりも大きく、
そしてキレイ咲くのです。

ヒマワリのマーシャのように。

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